こんにちは、さくさくです。
私は4ヶ月前に、乳がんで乳房全摘しました。
そして自家組織(お腹の脂肪)で、全摘と同時に乳房再建しました。
しかし先日、乳房再建の方法について考えさせられることがありました。
この記事が、乳がんの手術と乳房再建に向けて情報収集している方の、ご参考になればという思いで書いてます。
7/8追記 お腹の手術痕写真追加しました。
乳房再建は選択肢があるから難しい
乳がんで入院すると、がん友さんとでも言うべき同病の友だちができます。
がん友さんは、家族とも友人とも違う、病気になった不安をボヤき、将来に向かって励まし合えるありがたい存在です。
そのがん友さんの一人から相談がありました。
「乳房再建の方法について迷っている」と。
乳房再建にはいくつかの方法があります。
相反するメリット・デメリットを比較検討して、自分に合った乳房再建方法を選択するというのは大変難しい判断です。
乳房再建の方法
乳がんで失った乳房を再建するには、大きく2つの方法があります。
自家組織(皮弁)を使う
自分の皮膚、皮下脂肪、筋肉を自分の胸に移植する方法です。
これら自分の組織に血管をつけたものを皮弁(ひべん)といいます。
お腹の脂肪を使う
ボリュームがあるので、大きな乳房や下垂のある乳房が再建できます。
お腹の脂肪を使う乳房再建方法にもいくつか種類があります。
私が受けた乳房再建は深下腹壁動脈穿通枝皮弁法(しんかふくへきどうみゃくせんつうしひべんほう)というものです。
詳しくはこちらでご紹介しています。
背中の筋肉を使う
背中の筋肉を使う広背筋皮弁法(こうはいきんひべんほう)という再建方法もあります。
お腹の脂肪に比べて採取できる組織量が少ないので、小さめの乳房を再建するのに向いています。
背中の皮膚、脂肪、筋肉を、脇の下を支点として栄養血管がつながったままの状態で移植します。
広背筋をほぼすべて使うことになりますが、日常生活にはほとんど支障がないそうです。
その他の部位を使う
近年は、お腹・背中以外に、臀部や太ももの内側から皮弁を採取して乳房再建する方法もあるそうです。
しかし実施施設と件数は少ないと思います。
自家組織再建のメリット
自家組織で乳房再建する一番のメリットは、温かくてやわらかい自然な乳房を得られることです。
また一度再建が完了してしまえば、特にメンテナンスは必要ありません。
私はこのメリットを一番重視して、自家組織再建に決めました。
自家組織再建のデメリット
逆にデメリットは、お腹や背中など皮弁を採取したところに大きな傷が残ることです。
私は下腹の、左右の腰骨を結ぶ位置に30cm以上の長さの傷ができました。
また手術時間が長いこと、そのため手術を申し込んでからの待ち日数も長くなること、術式によっては限られた病院でしか実施していないこともデメリットです。
体への負担が大きいので、入院日数も長くなります。
また、将来妊娠の可能性がある人は、お腹の皮弁を使うことができません。
人工物(シリコンインプラント)を使う
近年、乳がんと診断されて、部分切除でなく乳房全摘を選ぶ女性が増えました。
これは、2013年よりシリコンインプラントによる乳房再建が保険適用になった恩恵だと思います。
シリコンインプラントによる乳房再建は、自分の組織を採取する必要がないので体の負担が軽く手術時間も短いのです。
シリコンインプラントによる再建の流れ
シリコンインプラントによる乳房再建は、まずエキスパンダー(組織拡張器)を大胸筋の下に挿入します。
一次再建の場合は、乳房全摘の手術と同時にエキスパンダー挿入を行います。
(元の乳房の大きさや実施施設によっては、乳房全摘とシリコンインプラント挿入の一度で手術が済むこともあります)
退院したら、数週間に一度外来に通って、エキスパンダーに生理食塩水を注入します。
徐々にエキスパンダーを膨らませることで、少しずつ皮膚を伸展させてシリコンインプラントを入れるスペースを作ります。
術後半年~1年かけて皮膚が十分に伸展したら、エキスパンダーをシリコンインプラントに入れ替えます。
入れ替える時は全身麻酔の手術を受けますが、入院は2~3日程度です。
人工物(シリコンインプラント)再建のメリット
何と言っても体の負担が少ないこと、これが一番です。
乳房再建するための組織を自分の体から取る必要がないので、乳房以外には傷ができません。
そして手術時間、入院日数が短く社会復帰も早いです。
私が入院している間、病棟でお会いした患者さんの9割はシリコンインプラントによる再建を選択している印象でした。
私が歩行器を押しながらヨタヨタ歩く一方、シリコンインプラントの前段階でエキスパンダーを入れた患者さんは、皆んな背筋を伸ばしてスタスタ歩いていました。
人工物(シリコンインプラント)再建のデメリット
残念ながら、メリットがあればデメリットもあります。
シリコンインプラントで再建した乳房は少しかたく、温度が冷たく感じられるそうです。
姿勢によって乳房の形が変わることはないので、仰向けに寝てもインプラントの形のままです。
年齢を経て自分の胸が下垂しても、再建した乳房は形を保っているのでアンバランスな印象になることがあるそうです。
また安全性等十分に確認された素材でも、長い年月の間にはメンテナンスが必要になります。
10~15年程度でシリコンインプラントを入れ替えるか抜去する必要があるかもしれません。
自家組織再建を選択した私の感想
4ヶ月前に、自分のお腹の脂肪を使う「深下腹壁動脈穿通枝皮弁法」という乳房再建術を受けた私の感想です。
よかった点
・乳がんの根治(乳房全摘手術)と乳房再建が一度の手術で済んだ。
時間的にも精神的にも、次の入院・手術が必要ないというのはとても有り難いです。
・手術が終わった時には胸の膨らみがあったので、乳房の喪失感がなかった。
・経年変化による入れ替えや抜去が必要ない。
困った点
・お腹の皮膚と脂肪を採取したので、術後腹部に強烈な突っ張り感がある。
・術後1週間程度はベッドから起き上がるのも大変だった。
・退院後2週間程度は、お腹の突っ張り感で真っ直ぐ立てず日常生活や家事に支障があった。
・お腹が突っ張るので、体を捻る動作が苦手になった。
手術を受ける前には、各再建方法のメリット・デメリットを読んで理解したつもりでした。
しかし、術後の体の負担は予想以上のものでした。
文字情報だけ読んで自分の都合のいいように解釈していた、安易に考えていたと少し反省しています。
お腹の手術痕画像
お腹の脂肪を使う自家組織乳房再建術(深下腹壁動脈穿通枝皮弁法)で、どれくらい大きな傷ができるのか、写真があった方がわかりやすいと思うので撮影しました。
見苦しい写真を公開して恐縮です💦
乳房再建手術から4ヶ月と10日ほど経過しています。
お腹に関しては治療等は終了して、今後何も処置がいらない状態です。
現在、皮膚表面のかゆみや痛みはまったくないです。
傷跡が衣服に擦れて刺激を感じることもなく、腹部の皮膚に関しては手術前と同じ感覚で過ごせています。
※へそは、お腹の皮膚の違う部分に穴を開けて作っています。そのため手術前に比べて、形が少し変わりました。
※自家組織を採取した影響で下腹が緩んで出っ張ることがあるそうです。形成外科の先生から、術後半年はガードル着用を推奨されました。へその左右に水平に肌の色が違うのはガードルのウエストゴム跡💦です。
乳房再建はどの方法を選択するか
がん友さんの相談を受けて「今の自分なら、乳房再建でどの方式を選択するか」改めて、真剣に考えました。
結局、一つメリットがあれば相反するデメリットがある。
どれだけ自分が納得して選択することができるかだと思います。
乳房再建は人間の体に行うことなので、事前に説明を受けた以外の想定外のこと、経過によっては途中不本意なこともあるかもしれません。
そんな時でも、自分の意思で納得して選んだ術式なら「これを乗り越えて頑張ろう」と思えるのではないでしょうか。
私に相談してくれたがん友さんにも
・時間に余裕のある分、いろいろ調べて納得できる選択をするチャンスであること
・よく考えて、自分で「この術式を選んでよかった」と思える選択をしてほしいこと
を伝えました。
まとめ
乳房再建から現在まで、大変なことはいろいろありました。
現在、まだ再建した胸の周りには痺れや麻痺感のようなものもあります。
それでもやはり、私は自分の選んだ術式で再建してよかったです。
これから乳がんの手術を受ける方、乳房再建の術式を検討している方が、満足の行く選択と結果を得られますように、心よりお祈りしております。
以上、本日は
乳房再建は自家組織とエキスパンダー&シリコンどちらを選ぶか~深下腹壁動脈穿通枝皮弁法お腹の傷跡はこんな感じです
という話題でした。
お読みいただき、ありがとうございます。
乳房再建って大変なんだね
なくなったものを、もう一度作る手術だからね
やってくれた先生にも感謝してるよ
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