こんにちは、さくさくです。
昨日の朝、無事退院しました。
このブログや、はてなブックマークでコメントをくださった方々、そして乳がんで乳房全摘と自家組織再建手術を受けてきますの記事を見て心配・応援してくださった皆様、おかげでとても励まされました。
そして、とても嬉しかったです。
本当にありがとうございました。
今回は、私が受けた乳房全摘と自家組織(お腹の脂肪)を使った乳房再建術の詳細、そして乳房再建にかかった費用についてです。
乳房再建は図でご説明しています。
グロではありませんが、そういう図はちょっと苦手…という方はご注意ください。
乳がんの標準治療
乳がんには標準治療というものがあります。
言葉の響きから「名医による特別な治療・最先端の治療を受けることのできない一般人のための治療」と受け取られることもあるようです。
しかし、全く違います。
標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療をいいます。
出典)国立がん研究センターがん情報サービス 用語集より
ひと昔前は、治療する病院や主治医の先生独自に治療法を決定することもあったそうです。
現在は、世界中の専門医による臨床研究を整理・分析し、それら最新情報に基づいて、学会や専門医のコンセンサスが得られた治療法が標準治療として確立されています。
すべての患者さんがどの医療機関でどの主治医を選択しても同じ治療が受けられる、乳がんの診療ガイドラインです。
乳がんの手術療法
乳がんと診断された場合、基本となる治療は手術です。
特殊なタイプの乳がんや、かなり進行している場合は手術以外の治療を選択することもあります。
手術と、放射線療法や薬による全身療法を組み合わせて行う場合もあります。
乳房部分切除術(乳房温存術)
病変を中心に過不足なく乳房の一部を取り除く手術が、乳房部分切除術(乳房温存術)です。
乳房部分切除術(乳房温存術)の場合は、再発を防ぐために術後に放射線療法を受けることになります。
私の受けた乳房切除術(全摘術)
私は乳房切除術(全摘術)を受けました。
いわゆる乳房全摘です。
私の場合、マンモグラフィと針生検で非浸潤性乳管癌と診断されて、当初は乳房部分切除術でいいとのことでした。
しかしMRIで確認すると
・病変部分が大きく乳房部分切除術では術後の形がかなり変わってしまう
・乳房部分切除術でも可能だが、術式としてはあまり勧めない
ということで、乳房切除術(全摘術)を選択しました。
私は左側の乳房切除術(全摘術)を受けました。
この図では乳房をスッパリと切り落とすようなイメージですが、私は乳頭と皮下の乳腺だけを切除して、皮膚は残してもらうことができました。
乳房再建
幸運なことに、大きながん専門病院で治療を受けたので、乳房再建の選択肢が豊富でした。
一次再建と二次再建
乳がんの切除手術と同時に乳房再建を行うのが一次再建です。
乳がんの切除手術だけ行って、後から乳房再建を行うのが二次再建です。
一次再建で一気に乳房再建する方が手間が少なくていい気がしますが「病気の治療に精一杯で再建方式まで考える余裕がない」という方もいらっしゃるそうです。
また「とにかく早く退院したいから再建はいい」という人も、私が入院した時にはいました。
但し、一次再建と言っても患者さんの選択した再建方式、病院のやり方によって様々です。
人工物か自分の組織(自家組織)か
人工物(シリコンインプラント)による乳房再建を選択した場合、一次再建は組織拡張器(ティッシュエキスパンダー)を入れることです。
数カ月後かけて皮膚を伸展させた後、組織拡張器(ティッシュエキスパンダー)をシリコンインプラントに入れ替える2回目の手術が必要です。
自家組織による乳房再建の場合は手術を受ける医療機関によって様々です。
私が手術を受けた病院では、自家組織(深下腹壁動脈穿通枝皮弁術ーこの後詳しく説明します)で乳房切除術と同時に再建してもらうことができました。
日本で一番乳がんの手術件数が多いがん研有明病院では、乳房再建のタイミングは以下の通りです。
お腹の脂肪を使う深下腹壁動脈穿通枝皮弁術
それでは、私の受けた乳房再建術について説明します。
詳しく書くと深下腹壁動脈穿通枝皮弁術(しんかふくへきどうみゃくせんつうしひべんじゅつ)という術式になります。
手術開始から3時間ほどかけて乳房切除術(全摘術)が終わったところからです。
下腹部の皮膚と皮下脂肪を、栄養血管をつけたまま体から切り離します。
筋肉は取りません。
へそは体に残るので、くり抜きます。
このひとかたまりを皮弁といいます。
皮弁の皮膚は使う部分だけ残して、使わない部分は削ります。
皮弁を胸部に移植します。
顕微鏡を使って栄養血管を胸部の血管とつなぎ合わせます(吻合ーふんごう)。
皮弁をとった下腹部は縫い合わせます。
手術後は30cm程度の傷が残ります。
私の場合、乳頭は摘出したものの胸の皮膚は残せたので、皮膚の下に皮弁の脂肪を入れる形で再建していただきました。
おかげで胸の傷跡も、乳輪部分ぐるりと、そこから脇に1本線が入るだけで済みました。
乳輪・乳頭のあった部分のみ、お腹の皮膚なのだそうです。
(乳頭は半年後に再建します)。
がんが皮膚に近接している場合は、乳腺・乳頭と一緒に乳房の皮膚も切除します。
その場合、乳房再建すると胸の膨らみはできますが周囲にぐるりと傷が残ります。
乳房再建の手術にかかった時間
文字で書くと簡単ですが、切り取った脂肪を反対側の胸と均等になるように形を整えて移植する、そして一度切り離した血管を顕微鏡を使ってつなぎ合わせるのは大変な作業で、とても時間がかかります。
私の場合、乳房全摘→再建の全行程で8時間ほどと聞いていて、実際の手術時間は7時間47分でした。
しかし病棟の看護師さんによると、血管の状態は人それぞれで、つなぎ合わせる時間もかなり変わるらしいです。
長い人だと10時間以上かかることもあるようです。
私は麻酔で眠っていたのでまったくわかりませんが、執刀してくださった先生方のご苦労を思うと感謝の気持ちでいっぱいです。
乳房再建の費用
事前にいろいろ調べて大掛かりな手術だと思っていましたが、実際に経験した感想は予想以上に大変でした。
そんな乳房再建(自家組織・深下腹壁動脈穿通枝皮弁術)手術の費用はこちらです。
92,880点!
これは診療報酬の点数なので、実際の金額は×10の928,800円!!!
かなりの金額だろうとは思ってましたが、実際の数字を見てびっくりしました。
この92,880点は再建術だけの点数です。
乳がん手術と乳房再建の入院費総額
この他に乳房の切除術と麻酔その他検査や入院費諸々すべて合計した診療報酬点数は16万点ほどでした。
13日間の入院で使った医療費総額160万円ですね(汗)。
もちろん自家組織の乳房再建術は保険適用なので、自己負担は3割です。
さらに高額療養費制度があるので実際の支払額はもっと少ないです。
これから乳がん手術と、深下腹壁動脈穿通枝皮弁術による乳房再建を受けられる方のご参考になればと思います。
まとめ
今回は、乳がんの手術で入院という、自分にとっては不本意なものでした。
しかし、多くの方にお世話になって、いい医療を受けられた点ではとてもありがたく感謝しています。
また、自分の代わりに健保組合が負担してくれただけで、高額な医療費を使ったことには変わりありません。
退院して既に健康を取り戻した気分ですが、思う通りに体が動くようになったらちゃんと仕事して納税して社会に恩返ししたいと思います。
国民皆保険制度の有り難味を実感した今回の入院でした。
退院当日の朝「ここで日の出を見るのも最後」と思ったら名残惜しくて、19階のラウンジに行きました。
自分の病室よりさらに眺めが良くて清々しいひと時でした。
こちらは前日、11階の自分の病室から見た日の出です。
以上、乳房再建(自家組織・深下腹壁動脈穿通枝皮弁術)手術の詳細と乳房再建の費用…という話題でした。
お読みいただき、ありがとうございます。
乳房再建の術式について考えたこと